ご飯の魅力を語ろう

vol.2服部幸應さん

学校法人 服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長

動画の内容をインタビュー記事で読めます

#2 「食育」のすすめ

僕が子どもの頃は、祖父母、親と3世代で暮らす大家族が圧倒的で、核家族はごく少数でした。ところが現在では、核家族世帯が80%を占めています。
子どもが幼児期から少年・少女期へと成長していく過程で、家族の風習や礼儀作法は祖父母が教えるものでした。今やその役目を果たす人がいない家庭が多数ということになります。
「三つ子の魂百まで」というように、幼児期に教わった箸の使い方や食事のマナーは、それが一生の基本になります。
幼児期は、たとえるなら“乾いたふきん”のようなもの。どんどん水を吸収するように、この時期の子どもは知識をぐんぐん吸収します。これは科学的にも証明されていて、たとえば小学校に入学してから漢字を学んだ子どもが6年時に受けた漢字テストの平均点は57点で、小学校入学より1~2年前から学んだ子どもの平均点は、なんと97点だったそうです。また、オリンピックでメダルを取るようなトップアスリートの多くも、幼児期からその競技を始めています。食卓で祖父母が果たしていた役割がいかに大きなものだったか、そしてこの時期の食育が、いかに大切かがわかります。

食育とは、

食べ物を選ぶ力を養うこと
食の伝承を家庭における共食の中で育むこと
食料問題、環境問題 など

これらを学校教育、家庭教育、社会教育の中で進めていくことです。
2005年に食育基本法が制定されました。僕は日本の教育の柱である「知育」「徳育」「体育」が機能するためには「食育」が必要だと思い、それを政府に訴えたことで、法律の策定にも深く関わりました。
なぜこのような法律が必要なのかといえば、核家族の増加などに伴い食育を家庭で行う機会が減っていることを危惧したからです。食育は家庭教育ですから、食育基本法は食卓基本法ともいえます。しかし現実には、家庭で満足に食育を行えていないので、ならば学校教育に取り入れるしかないと考えました。
学校でも、給食の時間だけで食育を行おうというのは無理があります。理想としては週に一度、食育の授業が組まれることです。
そしてせっかく子どもが学校で食育を学んでも、親の意識が低いようでは問題です。親御さん自身が食育を受けてこなかったとしても、子どものために、まず「食」を意識することから始めて欲しいですね。そして今後の食育は、子どもだけでなく親にもアプローチできるようなシステムにしていくべきだと思います。
#3へ続く