ご飯の魅力を語ろう

vol.2服部幸應さん

学校法人 服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長

動画の内容をインタビュー記事で読めます

#3 日本人は和食のおかげで
「口中調味」ができる

和食には一汁三菜という基本的な食べ方がありますが、これはきわめてよくできている食べ方です。
まずご飯がある。そして味噌汁などのつゆがある。そして魚や肉、野菜といった食材を使い分けてさまざまな調理法で仕上げた3種のおかずがある。これらを実にうまく食べる術を、日本人は生まれながらに身につけているのです。
味が濃いなと思ったおかずを食べると、私達は自然にご飯を食べますね。そして味がなじんで来たら、今度は甘いものを食べてみたりします。そして口の中が甘さで満たされると、今度は辛いおかずを食べてそれを中和します。このように日本人は意識せずに口の中で調味する、「口中調味」を行える能力があります。
しかし西洋では、まずはスープだけ、オードブルだけ、メインだけと、コースにそって順番に食べます。これでは口の中がニュートラルの状態に戻ることができません。和食は口中調味によってニュートラルに戻り、その状態で新たな一口を食べることができます。要は三角食べですね。これができるのは、やはり主食がお米だから。温かくても冷めててもおいしいなんて、これは素晴らしいことですよ。お米を中心とした和食の魅力は、若い世代にももっと伝えたいところです。
もともと日本人はお米という炭水化物中心の食生活を長い間送って来て、1965年には食事の77%を炭水化物が占めていました。このあたりから1985年くらいまでが、日本人はもっともバランスのいい食生活を送っていたと言えます。1965年の米の消費量は一人あたり年間約120kgでしたが、これが半世紀経った今は年間52kg、半分以下にまで減少しています。それに加えて炭水化物抜きダイエットなるものが流行っています。そんなの流行ってどうするのって思いますよ、人間の体にとってパワーの源である炭水化物を摂るのをやめるとは。糖尿病の方などの治療食としてはいいのですが、どこも悪くない健康な人がダイエット目的で炭水化物を食べないようにした結果、肝臓や腎臓を傷めるという弊害が起きています。体のためにも、極端なことはしてほしくないですね。
日本人の体は、DNAを考えると7~8代の世代を経ないと変わらないそうです。それだけの年月を経て、初めて新たな食生活に慣れていくということです。西洋料理が日本の食事に取り入れられるようになって、われわれで4世代程度ですから、日本人が外国とまったく同じ食事をするのは、本来はまだ耐えられないのです。
そんなことからも、今は改めて日本食を見直す時期に来ているのではないかと思います。その上で、西洋のいいものはいいものとして取り組んでいけば、栄養バランスもよい豊かな食生活になるでしょう。
#4へ続く