ご飯の魅力を語ろう

vol.2服部幸應さん

学校法人 服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長

動画の内容をインタビュー記事で読めます

#4 日本の食料自給率とオーガニック

1960年に池田隼人首相が今後10年で国民の所得を倍にするという「所得倍増計画」を打ち出したところ、なんと3年8カ月でそれが実現しました。その経済発展が奇跡と称される一方、当時74%あった食料自給率は、現在では38%にまで下がってしまいました。
食糧の6割以上を輸入に頼り、国内の農業を存亡の危機に陥らせているのが、豊かな日本の現実の姿です。
しかも輸入した食糧の約4分の1は、人の口に届くことなく廃棄されています。飢餓人口が世界で8億人を超える現在、このようなことが許されていいわけがありません。食べ残しをやめる、国産の農作物を買うようにする。そういった国民一人ひとりの心がけが、今まさに求められています。
また、トップアスリートの多くがオーガニックを中心とした食生活を送っているように、オーガニックが体にいいことは周知の事実です。国内にも8500軒ほどオーガニックを扱っている農家があることは僕も把握しているのですが、いずれも市場で販売することに苦労しています。栽培に手間暇がかかる分価格が高くなるので、扱いたがらないスーパーマーケットも少なくありません。国内でオーガニック市場が拡大していくためにも、スムーズな流通機構が構築できればと動いているところです。
日本はどうもオーガニックに対する意識が低いですね。輸入物の安い野菜と国産の高いオーガニック野菜があったら、ほとんどの人は外国産の野菜を購入します。その中でオーガニックを選んだ人にアンケートしたところ、購入する理由は「体にいいから」「子どものため」といった答えが中心でした。ところが欧米で同じ質問をすると、そういう回答はせいぜい30%程度です。残りの人はみな一様に「地球のため」と言うんですよ。地球のためにも、持続可能な農法をしていくためにも、オーガニックの農法で育てるべきだと。発想がもう根本的に違うんですよね。日本人がその意識に達するまでは、おそらくまだ時間が必要です。
しかし2020年の東京オリンピックに向けて、GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)の拡大は進んでいます。これはオーガニックと違い農薬も使えるのですが、栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にする、つまりトレーサビリティによって農作物の安全を確保するというものです。いま一番GAPの農作物を作っているのは北海道で、福島県も東日本大震災前から力を入れていました。福井県もぜひ日本が独自に制定したJGAPではなく世界基準のグローバルGAPに取り組み、国内のみならず海外市場も視野に入れて欲しいと期待しています。
#5へ続く