ご飯の魅力を語ろう

vol.3笠原将弘さん

恵比寿 日本料理「賛否両論」オーナー兼料理人

動画の内容をインタビュー記事で読めます

#1 和食の魅力と苦手な食材を
おいしく食べるコツ

和食の魅力は多彩です。
まず、料理に春夏秋冬の四季があり、いつでも旬のものが食べられます。日本人の多くは春になると「たけのこが食べたい」「山菜の天ぷらが食べたい」など、ごく自然に思うでしょう。1年を通じて常に何かしら食べたいと思う旬のものがあるから、和食は毎日食べても飽きることがありません。また、白いご飯とおかずたちを口の中で味の調節をしながら食べられるのも和食の魅力ですし、料理や季節によってこれほど器を変えるのも世界に類を見ません。そういう美意識も和食の魅力だと思います。
さらに、秋のお祭りが米の収穫を祝うことに由来しているように、和食には感謝する気持ちや相手を思いやる気持ちがあります。人間と神様の境界線がお箸で、「いただきます」「ごちそうさま」もお箸の向こう側にいる神様に対する挨拶ですよね。そういった魂に触れるようなものも和食には込められている、そんな点にも魅力を感じます。
1年中おいしい食材があふれている日本ですが、「魚が苦手」「野菜嫌い」など、不得手なものがある人もいます。苦手な食材をおいしく食べる方法論としては、僕は「ないものを補う」「悪いところを消してあげる」の2点を挙げています。
生野菜を例に見てみると、生野菜は本来、人はそれほど好むものではないんです。それでも大人が積極的にサラダを食べようとするのは、「好物だから」というよりも「健康のため」。せっかくなら生野菜をおいしく食べたい、ならば生野菜に足りない塩分と油分を補おうということで生まれたのがドレッシングです。さらに葉野菜の苦みを抑えるためにちょっと酸味を入れようとか、あるいは甘さを加えようなどとしていった結果、バリエーション豊かなドレッシングが生まれました。これは生野菜に限らずどの料理にも当てはめることができる方法なので、試してみてください。
その一方で、子どもは大人よりも好き嫌いが多く、とりわけ野菜が苦手な子が目立ちます。しかしそれは単なるわがままではなく、身体上の理由があるのです。毒を口にしたときに吐き出せるよう、子どもの舌には苦みを感じる部分が70か所以上もあるそうです。だから子どもが苦みを含む野菜を好まないのは自然なことなんですね。苦みを感じる部分は大人になるほど減少していくので、苦いものがむしろおいしく感じるようにもなるのです。苦いものをおいしいと思えない子どもに食べることを強制すると本当にその食材を嫌いになってしまうので、無理に食べさせず、おいしいと思えるまで待てばいいんじゃないかなと思います。
あと、大人で「魚が苦手」と言っている人の場合は、正しくは魚そのものが苦手なのではなく「調理するとキッチンが臭くなる」とか「小骨を除くのが面倒」といった理由が多かったりするものです。おいしく料理した魚を目の前に出されると、結構みんなおいしく食べます(笑)。面倒で作らないから食べないのであって、自宅では調理しなくても外食では食べるでしょう。子どもが魚を敬遠するのも食べる機会が少ないからであって、そのおいしさを知ることができていないから。ですからまずは面倒くさがらずに自宅で魚料理も作るようにしてほしいですね。
#2へ続く