ご飯の魅力を語ろう

vol.5橋本幹造さん

日本料理「一凛」オーナー兼料理人

動画の内容をインタビュー記事で読めます

#3 子どもは本能で知っている「おいしい」の定義

子どもって、本当においしいものを感知する力を持っていると思います。

お米の食べ方はさまざまです。カレーライスのようにルーをかけるものもあれば炒飯もある、丼物や炊き込みご飯もある。実に多彩です。そのこと自体はいいと思いますが、ちょっと気になるのは「なぜそんなにご飯にたくさん味を付けるんだろう」ということです。おいしいお米はシンプルに食べるのが一番おいしいと思います。
いちほまれは塩昆布、海苔、漬け物といったシンプルなものと一緒に食べるほどおいしさが際立ちます。もちろん若狭ぐじの塩焼きや若狭牛にも合いますが、お米の味のベースがしっかりしているからこそ素朴な食材に合うわけで、究極に言えば塩味だけでもおいしくいただけるのです。

ご飯の魅力を語ろう:日本料理「一凛」橋本幹造さん

先日店にやってきた3歳の男の子は、大人と同じコースを完食しました。〆のいちほまれだけは「おにぎりにして明日の朝ごはんに食べたい」と言うので、小さなおにぎりにしてお持ち帰りいただきました。
また、いちほまれでおにぎりを作るイベントでは、デモンストレーションで作ってみせたおにぎりを最前列にいた子にあげるつもりだったのですが、ほかの子どもたちが「不公平や!」「おにぎり食べたい!」って言い出して、僕の前にずらりと並んだんです。おにぎり待ちですよ(笑)。初対面なのに「この人のおにぎりはきっとおいしい」と、信用してくれたんですね。子どもって、大人が「これおいしいよ」といちいち言わなくても、本当においしいものを感知する力を持っていると思います。

2019年5月、福井で開催されたワークショップ「親子で楽しいおにぎり作り」
いちほまれには、本能を刺激するような底力があります

近頃は白いご飯食べない子どもいますが、あれはオムライスの食べさせすぎです。子どもが「ケチャップがかかったご飯じゃないとおいしくない」という味覚を持ったとしたら、それは親御さんに問題があります。
まずは白いご飯を食べて、ベースを知ることによって初めて好みが出てきます。ベースを知った上でのオムライス好きならいいのですが、最初からオムライスでスタートしてしまうと、ケチャップがないと生きていけない子になってしまいます。

たとえばいちほまれなら、子どもが思わず「お米ってこんなに甘いんだ」とか「なぜだかたくさん噛んじゃう」と感じるような本能を刺激するような底力がありますから、親御さんには、まずは食材そのものの味を味わわせるようにしてもらいたいですね。

僕の世代は子どもの頃に「もっと噛んで食べなさい」と言われました。でも今は「早く食べなさい」ですよね。そうすると子どもは噛まずに飲み込むようになります。できるなら子どもの食事を急かすのではなく、食べるゆとり、味わう時間を与えてあげられるといいですね。

ご飯の魅力を語ろう:日本料理「一凛」橋本幹造さん